タイトル:パッとしない子
作者:辻村深月
概要
先生•美穂の教え子が学校に訪れる。その子は佑。
有名アイドルで学校にドキュメンタリー撮影で訪れ、再会。二人で会話をする。美穂は、佑の弟•晴也の担任もしていた。
美穂は思い出話に浸る楽しい会話ができるのかと思っていたが、その予想は真逆。
新任直後の美穂は、担任のクラスでは人気でクラスの中心の子達と仲良く楽しい日々を過ごしていた。
そのクラスでおとなしかった晴也は、なんとなくいる生徒の一人であった。
美穂自体が傷つけようと思ったり、ないがしろにしたりしたつもりはない。
しかし、佑、晴也とその両親は非常に恨みに思っていた。美穂目線の意見では、繊細に勝手に傷ついただけ。
佑達はないがしろにされ軽く扱われた被害者の目線。その2人のやりとりと、美穂の内心が描かれている。
感想
作者自体の主張みたいなものは感じない文章であった。情景描写と簡単な美穂の本心を述べるだけで終わっている。
私には両者の視点はお互い理解でき、簡単にまとめたいと思う。
美穂は、佑達に深く関わることはなかったにせよ、傷つけたつもりも、悪意もなかった。
そんな中、勝手に傷ついた人が嫌悪感を持ち酷い言葉まで浴びせる。
不要な敵意は買いたくないのは誰しも望むことではあるが、自分より繊細な人に対しての自身の言動が傷つけることは想像し難い。
なかなか回避する対処法はない。
ある程度仕方ないと割り切りつつ、軽はずみに関わらないように注意はできるのかもしれない。
美穂も、新任で仲の良い信頼される生徒に出会い浮かれていた感じは否めない。
そんな中、生徒全体を俯瞰する視点を失った可能性がありそうだ。
会社等の組織のマネジメントでも、
結果を出したり、媚を売って等で寄ってきたりしてくれるメンバーを余りに贔屓しすぎると、
その他の方達から不満が溜まることもあるだろう。
非常にその様子が今回の物語にも当てはまる。
一定の嫉妬に近い感情は否定できないが、少し配慮して避けようと努めることは必要に思う。
佑の意見も分かる部分も多い。
先生のお気に入りに外れた寂しさは誰しもあるはずだ。
先生を中心とした輪が強く長期間なほど、排他的に扱われているという負の感情は強くなるはずだ。
そんな思いを抱えて卒業した後自分が大成した時に、仲良く自身の成長に貢献してきた雰囲気を出されても迷惑な話である。
私は小学生の時、塾に通って中学受験をし無事合格した。学校の授業が大きく貢献したとは全く思わない。
むしろ希望者に募る課外活動(水泳や陸上の大会)に強制参加させられ、
時間的にも体力的にも厳しい思いをさせられたマイナスの記憶が大きい。
今では非常に忙しいながらも楽しかったのも事実ではあるが。
クラスで私しか中学受験をしなかった田舎の環境を前提としてほしいが、
卒業後に、〇〇に受かった生徒を指導したと言い周囲の視線を引きつけようとしていた話をしばらく聞いた。
それに不愉快な思いをした、という経験がある。その目線で考えると佑の気持ちは理解できる。
この話を自身に生かすなら、
•組織では、不必要に人を重宝しすぎず俯瞰的に個々の感情に向き合う。
•ビックな知り合いが知り合いだと吹聴して、自身も大きく見せようとしない。
であろうか。
個人的には白黒がつけられずモヤモヤっとした感じであった。情景は分かりやすくスラスラ読める本であった。
パッとしない子は非常に秀逸なタイトルであった。パッとしない子って…?で読み進められる。